ハマの「ものづくり」コンサル会社奮闘記

〜シニアコンサルタントは見た。これが日本のモノ作りの現場だ!〜 現場は無理・無駄・難題の宝庫で、唖然呆然の毎日・・・彼らの目に映るものは、ありふれた日本のメーカーが抱える悩みや課題ばかりだ。

ISO(アイ・エス・オー)を巡る悲喜劇コモゴモ 〜その3〜

■ISO9001導入効果に関する弊社ISO コンサルタントの見解
弊社では2007年の3月から(株)工業調査会が発行している月刊誌「M&E」に設けられた「ものづくり技術Q&A」コーナーで回答執筆を担当していますが、2007年の5月号にISO9001の実効性に関して疑問を投げかける質問が寄せられました。弊社コンサルタントの見解がコンパクトにまとめられていますので、(株)工業調査会 M&E編集部のご了承を得て、以下に転載いたします。


〜株式会社 工業調査会発行 M&E2007年5月号「ものづくり技術Q&A」より〜
回答担当:(株)浜テクアート主席コンサルタント 永江 究

Q:ISO9001を取得したものの、業務改善できない・・・どうすれば良いか?」(京都府 メーカー 男性)

A:日本でISO9001の取得が始まってから十数年が経ち、登録組織数も54,000件に達していますが、残念ながら現在でも
「書類が増えて、余計な仕事も増えて、面倒くさくなっただけで、うちの会社は何も良くなっていない」という話を少なからず耳にします。
これには大きく分けて2つの原因があります。

■原因1:品質マネジメントシステム(以下、QMS)が、会社の役に立つために有効に機能するように作られていない。
■原因2:経営者に、経営理念の実現のためのツールとしてISOを活用する考えがない。
この2つに起因した事例と改善策を、次に述べます。

1.ISO取得準備段階でQMSを構築するにあたり、ISO規格要求事項に対し過剰に厳格で複雑な仕事のルールにしてしまい、ルール通りに仕事をする事が困難なQMSになっていることが考えられます。
□事例1:文書の最新版が第何版なのかを証明するために、台帳で管理した上でその台帳が最新版である事を証明するための台帳の改訂履歴を作り、管理責任者が台帳と共に鍵のかかるキャビネットで保管する事にしていた。
そのため、文書を常に最新版にする、つまり改訂版を発行する事を敬遠するようになり、文書と実際の業務とが乖離していた。
加えて、最初にQMSを構築し文書類を作成した者が会社の中枢にいる幹部であったため、文書改訂が暗黙のタブーとなり、文書改訂に繋がるような改善は避けて通るようになっていた。
□改善策1:管理責任者を含めた幹部に対し、QMSが過剰に厳格で複雑になっており、機能しなくなっていることを理解していただく。
ISO規格要求事項を最低限満たすレベルで、自分達が納得できる自分達のため・会社のために役立つ仕事のルールに変え、ISOの審査のための文書と記録は廃止するという姿勢で、QMSを抜本的に見直し再構築します。

2.顧客からISO取得が商取引の条件とされたため、やむなくISOを取得し、経営者もISOに係わるコストを営業経費と割り切って登録を維持している会社が散見されます。
また、経営者を筆頭にした幹部がISOを取得し維持することで十分と考え、QMSの構築段階での業務の標準化、ノウハウの共有化などのレベルで留まっている会社があります。
さらに、経営者が目指す会社運営のあるべき姿を実現するためのマネジメントツールがシステムに組み込まれている事を経営者がよく理解していないため、経営者を含む幹部にISOを有効活用しようという発想がない事などが考えられます。
□事例2:品質目標がスローガン的なものとしては定められていたが、その目標を達成するための手段・方法を検討し、実行している形跡は無く、ましてや達成度の評価とその結果に対する対応などは全く行われていなかった。
ISO事務局に、予防処置はどのような事をやっていらっしゃいますかと伺ったところ「難しいんだよね。不適合を是正処置として対応するのか、予防処置として対応するのか、振り分ける基準でいまだに悩むんだよ」と答えられ、唖然とした事があった。
経営者に、“マネジメントレビュー”について質問すると“インタビュー”と勘違いしてご返事いただいた。
□改善策2:QMSの中での改善のためのキーポイントは、品質目標、是正処置、予防処置、内部監査、マネジメントレビューです。
これらのISOの改善のための要求事項を、担当者レベルだけではなく経営者やその他の幹部、管理責任者、ISO事務局などがよく理解し、自分達の会社に合った仕組みと活用方法を構築します。
その結果「ISOを活用しない手はない、有効に使って継続して改善を進め、製品も会社も良くして行こう」という機運を盛り上げて、有効活用、改善に繋げます。
(以上:株式会社 工業調査会 M&E編集部のご了承の上、2007年5月号より転載)

これは技術者向けの真面目な月刊誌に掲載された内容なので、かなり抑えたトーンの文章で書かれていますが、その基になった現場の実体験を聞いたところ、かなりのカルチャーショックだったそうです。

次号にその辺りの事情を紹介しましょう。
(以下次号に続く)

PageTop